快適な食生活は、健康面ではもちろん、私たちの生活に活気と楽しみを与えてくれます。そして会話は、コミュニケーションをスムーズにし、人間関係を豊かにしてくれます。どちらも生きていく上でとても大切なことですが、これらは健やかな口腔環境によって支えられています。それが口腔がんによって奪われてしまうことになったとしたら?
口腔がんの5年生存率は60~80%と比較的高く、初期の段階で発見・治療をすれば、十分に元の生活を取り戻すことが可能です。しかしかなりステージが進んでしまうと、命を救うために手術で舌や顎の骨を切除しなければならなくなり、食事や会話がとても不自由になります。
アメリカをはじめとした先進諸国では、口腔がんの早期発見・早期治療が積極的に行われているため、がんになる確率は高くても、死亡率は減少傾向にあります。しかし、日本はどちらも増加の一途をたどっています。この違いは一体どこにあるのでしょうか?
日本では、ほかのがんに比べて口腔がんの認知度が低いことに大きな原因があります。口腔がんから大切な命を守り、いつまでも健康で快適な生活を送るために、私たちにできることがあります。それは、口腔がんの認識、予防、早期発見、早期治療です。
口腔がんとは、お口の中にできる悪性腫瘍を指します。細かく分類すると、舌がん、歯肉がん、口腔底がん、頬粘膜がん、口蓋がん、口唇がんがあり、一番多いのが舌がん、次が歯肉がんです。発症原因は、虫歯や歯肉炎などで粘膜に慢性的な刺激がある、細菌感染などのほか、喫煙や飲酒も口腔がんの引き金になりやすいと言われています。
口腔がんの自覚症状で多く見られるのが、口腔内の痛みや腫れ、潰瘍、出血、口臭などです。これらを虫歯や歯周病、口内炎といった口腔内疾患だと思い込み、知らないうちにがんが進行していた、というケースも少なくありません。また、初期の段階ではほとんど痛みがないため気がつかない場合があります。
歯肉が腫れる、しこりがある、治りにくい口内炎や傷があるときは、口腔がんを疑ったほうがよいでしょう。